原子・陽子・中性子・電子
・原子
このページでは、物質についてミクロな視点で見ていきます。
物質をミクロな視点で見ていくと、原子というものに行き着きます。
この原子とは、物質としての最小単位となるものです。
その大きさは非常に小さく、原子の直径は約10-10mしかありません。
このレベルになると、特殊な顕微鏡を使わないと直接観測出来ません。
そんな小さい原子ですが、さらにこれを構成する3つの粒子があり、これをそれぞれ陽子、中性子、電子といいます。
原子の構造のイメージは右図のような感じです。
が陽子、が中性子、が電子を表します。
右図のように、原子の真ん中に陽子と中性子が固まっており、これを原子核と言います。
原子核の周りに電子が存在します。
ちなみに右図は4Heの原子構造のイメージです。
この4Heというのはこれより下の中性子のところで解説します。 | |
・陽子
陽子は、上の図で+と表記していたので薄々気付いている人もいると思いますが、正の電荷を持っています。
さらに、原子の性質はこの陽子の数で決まります。
この陽子の数(陽子数)を原子番号と言います。
この原子番号はその名のとおり原子の背番号みたいなものです。
具体的には、原子番号1の原子はH、2の原子はHe・・・と前ページで学んだ元素記号によって表せます。
要するに、元素記号=原子番号を表すものという解釈も出来るわけです。
・中性子
中性子は、その名前のとおり電気的には中性で電荷は0です。
この中性子は、数が変化しても原子の性質は変わりません。
しかし、陽子の数とある程度バランスが取れていないと原子核が保っていられなくなるので、原子番号に応じて原子はそれ相応の中性子を持っています。
中性子は陽子とほぼ同じ重さであるという特徴を持っています。
そして、原子の質量は陽子+中性子の数で決まり、これを質量数と言います。
ここで、あれっ??って思った人もいるかと思います。
先ほど述べたように、原子は陽子・中性子・電子で構成されているので、質量数に電子は考慮しないのか??
確かに電子にも重さはありますが、その質量は陽子・中性子と比べると非常に軽く、陽子・中性子の約1/1840ほどしかありません。
このため、電子の1個や2個ぐらいでは原子の質量にほとんど寄与しないと考えられるので、質量数は陽子+中性子の数となるのです。
ちなみにある原子の質量数を表したい場合は、その原子の元素記号を書いて、その左上に質量数を書くことで表します。
つまり、元素記号Aで表す原子がxの質量数を持つ場合、xAと表します。
先ほどの4Heというのはまさにこの表し方です。
上の図より陽子2個、中性子2個→原子番号2、質量数4となり、原子番号2の元素はHe(ヘリウム)であるので、4Heとなるのです。
また、元素記号の左上に質量数を書くだけでなく左下にも原子番号を書く表し方もあります。
つまり、原子番号2、質量数4のHeならと表します。
しかし、元素記号によって原子番号を表せるため、この表記方法は通常あまり使いません。
・同位体
原子番号が同じ原子でも、中性子の数が違って質量数が異なるようなものもあります。
これを同位体(またはアイソトープ)と呼びます。
例えば、原子番号1のH原子の場合、同じH原子でも天然に99%以上存在する1Hの他に、2Hと3Hがあり、それぞれ中性子数が0,1,2個と違います。
これら全てH原子の同位体です。
同位体は、中性子の数が違うだけであるので、化学的な性質は変わりません。
しかし、質量が異なることにより、沸点や密度などの物理的な性質は多少異なります。
ちなみに、2Hは重水素、3Hは三重水素と呼ばれ、それぞれD、Tと表されることもあります。
また、三重水素は水素や重水素と比べて原子核が不安定であり、放射線を出して原子核が崩壊したりします。
三重水素に限らず、炭素の14Cなど原子核が不安定な同位体を持つ元素はあり、このような同位体を放射性同位体(またはラジオアイソトープ)といいます。
この放射性同位体の崩壊については「無機化学」の方で解説します。
・電子
陽子が正の電荷を持つのに対し、電子は負の電荷を持ちます。
また、陽子1個と電子1個の電荷の絶対値をとった量は同じであり、陽子と電子が同じ数ある場合は電気的に中性になります。
電気的に中性であると安定するので、基本的に原子は陽子と同じ数の電子を持っていると考えます。
つまり、原子番号1のHなら電子1個、原子番号2のHeなら電子2個・・・といった様になります。
ただし、次のページで述べますが、原子は電子を受け取ったり放出したりしてイオンになることもあるので、原子は絶対に陽子と電子が同じ数でないといけないというわけではありません。
また、先ほども述べたように電子の質量は陽子や中性子よりも非常に軽いです。
・ボーアモデル
電子は原子核の周りに存在すると先ほど述べましたが、具体的に電子はどのように原子核の周りに存在するのでしょうか??
電子が1個1個どのように配置しているかを考えたものとして、ボーアという人が考えたボーアモデルというものがあります。
これは、電子が原子核の周りをいくつかの層に分かれて円運動しているものとし(この層を電子殻といいます)、各電子殻に順番に電子がつまっている、という考えです。
これについて表したものが右図になります。
右図のように、原子核に近い電子殻から順にK殻、L殻、M殻、N殻・・・と名前が付けられています。
そして、電子は一番原子核に近いK殻から順番に入って、K殻が満たされると次にL殻に入ります。
また、電子殻の電子の収容数はそれぞれ、K殻は2個、L殻は8個、M殻は18個、N殻は32個・・・となっております。
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ただし、原子番号18のAr(アルゴン)まではこの規則どおりに電子が入りますが、原子番号19のK(カリウム)以降は電子が入る順番がちょっと変わります。
Kの電子配置はボーアモデルで表すと下図のようになります。
このようにKは、K殻は2個、L殻は8個、M殻は8個、N殻は1個といった配置をしており、M殻が満たされる前にN殻に電子が入っています。
また、原子番号20のCa(カルシウム)もM殻は8個まででN殻に2個入る、といった配置をし、原子番号21のSc(スカンジウム)以降は再びM殻が満たされるまで入る、といった入り方をします。
このようになる理由は、ボーアモデルで説明は出来ず、電子軌道という考え方が必要になります。
これについては、発展編〜電子軌道〜で解説します。
電子軌道については高校生の範囲ではないですが、大学以降で化学を学ぶ場合に非常に重要ですので、一度は見ておくといいでしょう。
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